店内で、あるお客様の仕草が目に留まりました。
話しながら、人差し指でメガネをくいっと押し上げる。数分すると、また押し上げる。
ご本人は、もう癖になっていて気づいていません。
声をかけると、こうおっしゃいました。
「私、鼻が低いから仕方ないんです」
いえ、仕方なくありません。
メガネがずり落ちる。鼻や耳の後ろが痛くなる。フレームの跡が残る。
多くの方が「自分の顔の形のせい」だと思い込んでいます。
違います。メガネの側が、あなたの顔に合わせきれていないだけです。
顔は、基本的に左右非対称です。耳の高さも、こめかみの幅も、左右で微妙に違います。
だから、正しく調整されたメガネをよく見ると、フレームはわずかに左右非対称になっています。顔に合わせた結果です。
買ったままの左右対称のメガネが、非対称の顔にぴったり乗るはずがないんですね。
「ずり落ちても、押し上げれば見えるからいい」
そう思われるかもしれません。でも、これは見た目だけの問題ではありません。
正しくフィッティングされていないメガネは、レンズの性能が30%以上低下すると言われます。
レンズには、いちばんよく見える一点があります。ずり落ちると、瞳がその一点から外れます。
外れたまま見続けると、目は無理にピントを合わせようとし、首は無意識にあごを引いたり上げたりして補正します。
夕方の目の疲れ、慢性的な肩こり、頭の重さ。
その犯人が、実は「ずり落ちたメガネ」だった——そういうことが、本当によくあります。
メガネセンターのフィッティングは、6つの工程に分かれています。
ここまでやって、はじめてレンズは本来の性能を出せます。
そして、もうひとつ。
メガネは毎日、掛け外しされます。少しずつ、必ず型崩れします。
洋服にアイロンをかけるように、メガネにも定期的な調整が要るんです。
「最近ずり落ちるな」と感じたら、指で押し上げる前に、一度お店に持ってきてください。
数分の調整で、掛け心地は見違えます。
あの「くいっ」と押し上げる癖、今年で卒業しませんか。